■南極フライト 【2003年11月10日】
「先週末、南極に行ってきたよー!」
日本だと冗談にしか聞こえないけれど、オーストラリアではそれがホントに可能だ。夏の間だけ、という条件付きで日帰りの南極行きフライトが運航していて、今ちょうどシーズンが始まったばかりなのだ。
今シーズン初のフライトは11月4日。この日のフライトはメディア関係者へのお披露目も兼ねていて、わいわいがやがやと賑やかなゲートでは、テレビの撮影クルーが次々に搭乗前の乗客にインタビュー。横ではペンギン(ホンモノじゃなくて着ぐるみね)がもそもそ歩いていたりもする。南極へは着陸しないので、案内書には「国内線なので免税品は購入できません」と書かれている。ちなみに持参するものの欄にはカメラ、予備の電池、双眼鏡、サングラス、コンパスなどが並ぶ。
シドニー〜南極間のフライト時間は片道4時間から4時間半くらい。往復約9時間に、南極上空で過ごす時間が約3時間半ある。ん? ちょっと待って、シドニーから西海岸のパースまで行きは5時間、帰りは4時間かかるんだけど! 南極が近いというか、オーストラリアがデカいというか……。
行きの機内では、専門家たちによるトークあり、基地にいる科学者との無線通信あり、と盛りだくさんの内容。南極関連のビデオがたくさん上映され、お土産グッズまでいろいろ売りにきたりもした。
そうしているうちに、気がつくといつの間にか飛行機は高度を下げている。窓から外を眺めるとそこはもう別世界だ。世界で一番寒くて、風の強い大陸。白銀に輝く世界を眺めていると、南極はピュアだなあ、という思いでいっぱいになった。海の色まで特別な青色に見えるのは目の錯覚だろうか。
機体はボーイング747-400だから、エコノミークラスだけでも300席以上ある。遊覧飛行なんていう大きさではないのだが、見どころではちゃんと機体を傾けたり、旋回してくれたりする。
離着陸の際には、操縦室に備えつけられたビデオカメラからの映像や、管制官のやりとりの音声がライブで流され、帰りの飛行機では、操縦室の中の機長のすぐ後ろの席がオークションにかけられたりもした。「今どき乗客を操縦室に入れて座らせてくれるのは世界中でこの南極フライトだけ!」というのが売り文句。すぐ前の席に座っていた家族連れが$2,450で競り落とし、その日が誕生日というお父さんがニコニコと操縦室に向かった。売上金はクリーンアップ・オーストラリアに寄付されるそうだ。
この日の総飛行距離は結局1万800キロ余り。3時間はほぼ同じ方向に首を傾けていたから、さすがに疲れたけれど、次回はぜひぜひ船で南下して上陸し、世界の果てを体感しようと思った。
Antarctica Sightseeing
Flights
(「地球の歩き方」ホームページ・シドニー特派員レポート掲載)
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