■シドニー・オペラ・ハウスが国家遺産に
【2005年8月18日】
オーストラリアでは、国、州、地方自治体の3つのレベルで、ヘリテージ(遺産)の保存政策を実施している。既にステイト・ヘリテージに認定されていたシドニー・オペラ・ハウスが、先月ナショナル・ヘリテージ(国家遺産)のリストにも加わった。
きっと「えっ? オペラ・ハウスって、遺産っていうほど古いの?」という疑問を抱く人もいるだろう。オペラ・ハウスが完成したのは1973年。建設に14年かかったとはいえ、オープンは30数年前のことだから、その疑問はもっともといえる。
現在、このナショナル・ヘリテージに認定されているのは、オペラ・ハウスも含めて14ヵ所。オーストラリアには全部で16ヵ所の世界遺産が登録されているが、そのリストとはまったく重なりがない。
それというのも、オーストラリアのナショナル・ヘリテージというのは、国民、歴史、アイデンティティにとって国家的な重要性を持つ特別な場所のこと。「古い」かどうかよりも、地域社会が特別な価値を認め、後世に伝えていくべき「ヘリテージ」と見なすかどうが重要ということになる。「社会遺産」ともいうべき要素の重視は、多様な文化を抱えて、ナショナル・アイデンティティを模索し続けているこの国ならではの事情なのだと思う。
もっともオペラ・ハウスの建つベネロング岬には、入植以来の歴史がある。地名からして、イギリス人に捉えられたあと、アーサー・フィリップ総督に協力し、白人と先住民アボリジニとの橋渡しの役割を果たした先住民ベネロングにちなんだものだ。
そんなわけで、オペラ・ハウスの次なるステップは、世界遺産リスト入り。オーストラリア環境・遺産省は、オペラ・ハウスのデザイン・コンペが実施されてからちょうど50周年を迎える2007年の登録を目指し、近々ユネスコへの推薦を行う予定である。
(「地球の歩き方」ホームページ・シドニー特派員レポート掲載)
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