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あとひとつ!二連覇に大手をかけたワラビーズ
【2003年11月17日】

開幕から4週間を経た先週末(11月8、9日)、メルボルンとブリスベンで2試合ずつ準々決勝が行われ、1次リーグをそれぞれ1位で上がったA組オーストラリア、B組フランス、C組イングランド、D組ニュージーランドの4強が順当に準決勝進出を決めた。

この後の戦いの舞台は、再びシドニーのテルストラ・スタジアムとなるため、シドニー市内のホテルは、各国の報道陣やラグビー・ファンで満室。街にはラグビー・ジャージを着た人の姿が異様に目立つ。準決勝は、オーストラリアvsニュージーランド、イングランドvsフランスと奇しくも長年の隣国同士のライバルが戦うことになった。

国歌斉唱
オーストラリア代表は何とか準決勝進出にこぎつけたものの、これまでの今ひとつ冴えない戦いぶりに「大会史上初のニ連覇なるか」という話題はすっかり下火。準決勝を前に、国内メディアはそろって、「ワラビーズの優勝はムリ」という論調で、大会のオフィシャルなスポーツ賭博(SportOdds/SuperOdds)のオッズも、ニュージーランド1.23に対し、オーストラリア4.35。オール・ブラックスの勝利はほぼ確実と踏んで2〜3万ドル賭けている人が多数いる、という話だった。今年の対オール・ブラックス戦は、8月16日のブレディスロー・カップが17対21、その前が21対50というさんざんな結果だったこともあり、ファンの間でさえ悲観的ムードは濃厚……。ちなみに、過去のワールドカップでは、前回優勝国が準決勝で勝ったことはないらしい。

決戦の日は、11月15日。日中30℃を上回った気温は、日が沈んでからも思ったほど下がらず、真夏の夜を思わせる暑さだった。隣国のライバル心ゆえか、なぜかキウイ(ニュージーランド人)相手には必死になるオージー気質が発揮されることを祈りつつ、会場に足を運ぶ。

オーストラリアvsニュージーランド
この日の観客数は8万2,444人。大会記録更新である。会場で目立つのは、もちろんワラビーズのチームカラーの黄金色だ。さらに、会場に隣接したラグビー・ゾーンには約3,000人が、オペラハウス前ほかシドニー市内のラグビー・ライヴ・サイトには3万人が繰り出したそう。

今大会初の「番狂わせ」はここで起こる。連覇を期待されながらも、大会の途中から「勝てない」と言われ続け、危機感いっぱいのワラビーズは「王者」としてではなく、チャレンジャーとしてこの決戦に挑んだ。若くて勢いのある今のオール・ブラックスに華があるのは確かだろう。でも、ワラビーズが本領発揮したときの辛抱強い試合展開はいぶし銀だと思う。

下馬評をものともせず、我らがワラビーズは序盤から気迫満々。前半10分で、相手パスをインタセプトし、あっけなく先制トライをあげた。モートロックが何と約80メートルも独走したのだ。その後は、攻撃力に勝るオール・ブラックスを得意の粘り強い防御スタイルで封じつつ、終始リード。大方の予想を裏切り、22対10と鮮やかに決勝進出を決めた。ここに来て、つまらないハンドリングミスやラインアウトでのミスもぱったりと消えた。試合中、「ワルティング・マティルダ」の大合唱が繰り返し何度も会場に響き渡ったのが印象的だった。

試合終了直後のワラビーズ
ノーサイドの笛が響いた瞬間の歓喜のようすは忘れられない。抱き合ってお互いの健闘を讃えあった後、笑顔いっぱいでスタジアムをゆっくりと周るワラビーズの選手たち。温かく歓声を送り続けるラグビー・ファン。まるで優勝したような光景だった。時が流れ、オーストラリアで「ワールドカップ2003」のことが振り返られるときには、決勝ではなくこの試合になるのではないかとさえ思う。

結果を国内メディアがどう報道するのか楽しみだったが、地元紙「シドニー・モーニング・ヘラルド」のウェブサイトの速報での見出しは、"It's simply magic: the Wallabies have done it"だった。

一転して小雨が降り続き、肌寒い冷え込み模様となった昨夜は、もうひとつの準決勝が行われた。結果は、ウィルキンソンのキックだけで得点を稼ぎ出したイングランドが24-7でフランスを下し、北半球ナンバー1の実力を見せつけた。決勝でのオーストラリアvsイングランドの顔合わせは、1991年以来12年ぶり。前回はホーム・グラウンドで準優勝に甘んじたイングランドが下馬評では有利と見られているが、自信を取り戻したワラビーズが再び地元大観衆の声援を味方に、大健闘することを祈りたい。

(「地球の歩き方」ホームページ・シドニー特派員レポート掲載)

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