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新型インフルのワクチン接種プログラム開始まで秒読み……かな?
【2009年9月7日】

世界で初めて、新型インフルエンザA(H1N1)のワクチンの安全性と有効性を
検証する臨床試験(治験)をスタートしたのは、オーストラリアのVaxine社と
CSL社なのだそう。

それから約1ヵ月後の8月20日、これまた世界初の予備治験結果(Preliminary
Trial Data)の報告がCSLから行われたことがジム・ビショップ連邦首席医務官
(CMO=Chief Medical Officer)によって公表されました。数週間以内に
さらに詳しいデータが報告された後に認可される見通しで、いよいよ
オーストラリアの新型インフルワクチン接種プログラムは開始まで
秒読みの段階となりました

連邦政府は、既に2,100万人分のワクチンを発注……ということは、1回投与なら
全豪人口をカバー、2回投与が必要な場合でも国民の半数に相当する量が
確保されていることを意味します。接種対象者として優先されるのは、
最前線にいる医療従事者と、重症化のリスクが高い持病のある人や
妊娠している人たちなど。最初の200万人分は既に納入済みで、早ければ
9月中旬の出番を待っているところだと言われています。

本格的なワクチン接種の導入を前に期待が高まっていますが、その一方で、
予期できない副作用を懸念する声も少なくありません。

「後遺症などが残った場合、医師が訴えられるリスクが非常に大きい」
として、保険会社側が賠償責任保険の適用を渋っているのに対し、
オーストラリア医師会(AMA)は、「賠償責任の問題が片付かない限り、
接種プログラムは実施できない」と反発。オーストラリア感染症協会
(ASID=The Australasian Society for Infectious Diseases)は、
CSLのワクチンがマルチ・ドーズ・バイアルであることへの憂慮から、
「数ヵ月前は緊急性があったかもしれないが、流行が沈静化した今では
無理に急ぐ必要はない」と、政府に再考を促しています。

新型インフルエンザに感染して重症化するリスクと、それを防ぐべく
登場したワクチンの副作用のリスク……う〜ん、難しいところですね。

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(「地球の歩き方」オーストラリア・シドニー特派員ブログ掲載)
 
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