■ホエール・ウォッチング
【2001年7月22日・30日】
シドニーは今が一番寒い真冬にあたる。朝晩ぐーんと冷え込むこの季節、実はクジラが見られる絶好のシーズンでもある。夏の間はエサの豊富な南極方面で過ごすクジラが、水温が下がる冬になると北上してくるからだ。暖かい海で子どもを産むため、冬の終わりには小さな子クジラと一緒の姿が見られることも多い。
オーストラリアの東海岸沿いを移動するザトウクジラの数は、今では3,000〜4,000頭と言われているが、捕鯨が禁止された1962年当時の生息数は200〜500頭で、その後10年ほど沖合いで目撃されることはほとんどなかったらしい。
シドニー沖は、5月下旬から8月にかけて北上し、8月から11月にかけて南下するクジラたちの通り道だ。今年は、わずか2時間の間に20頭以上のクジラが確認されたこともあり、例年以上に数が増えているようだ。つい先日も、ひどい傷を負って、シドニー湾に迷い込んだクジラがいて、数日後に仲間が迎えに来たという心温まるニュースが流れていた。
シドニーから一番近いところでウォッチング用の船が出ているのは、車で北に約2時間半のところにあるポートスティーブンス(※)。通年イルカが見られることから観光客にもよく知られている街だ。専用のクルーズ船では双眼鏡を手にしたクルーが、ほかの船と情報を交換したりしながらクジラを探し出し、見つけたら一路そこへ向かう。自然保護の立場から100メートル以内には近づいてはいけない、という決まりがある。
<注目> オーストラリアのイチ押し > シドニー発 自然満喫!究極のエコツアー
※ユーザー割引価格あり
船に乗らなくても、運がよければ陸からクジラが見られるスポットがシドニー近郊にはいくつかある。2年前には北部のビーチ近くをいつまでもウロウロして、「アレックス」という名前までつけられた人気者(?)のクジラがいたくらいだ。青空の広がる週末には「そうだ、クジラを見に行こう!」というノリで、双眼鏡とコーヒーを持って出かけることが、我が家でも年中行事として定着している。高層ビルのある中心部から車でたった15〜30分ほど走っただけでビーチがいくつもある街に住む、ささやかな冬の楽しみのひとつである。
※現在はシドニー湾発着のホエール・ウォッチング・クルーズが出ています。詳細は、こちら。(2005年6月追記)
オーストラリアではシドニー近郊の東海岸だけではなく、クジラが頻繁に訪れるスポットがあちこちにある。どこもシーズンはやっぱり冬! ということは今がチャンスなのだ。主要なところを紹介しておこう。
●Hervey Bay(クイーンズランド州)
ハーヴィー・ベイ海洋公園では7月から10月にかけてザトウクジラが見られ、8月がピークシーズンとなっている。半日または1日のウォッチング用クルーズがいくつも出ており、ブリスベン発のツアーもあり。すぐ沖合いには、世界遺産にも指定された手つかずの自然が残るフレザー島(世界最大の砂でできた島)があるので、ついでに足を伸ばしてみるのもいい。
●Byron Bay(ニュー・サウス・ウェールズ州)
バイロン・ベイはオーストラリア大陸最東端にあたる。ザトウクジラを陸から見るのならココははずせない。北上のピーク(6月下旬?7月上旬)は過ぎてしまったが、9月から10月にかけて南下する際に再び通り道となる。ここはオーストラリアのクジラ調査の中心地で、最新のテクノロジーを駆使して、スピードや進行方向のデータを集めたり、DNA分析をしたりしている。水中マイクを使ってクジラたちの歌を収集するユニークな研究も注目を集めている。
●Warrnambool(ヴィクトリア州)
メルボルンの西約260キロにあるワーナンブールは、7月から10月にかけて、ミナミセミクジラを陸から見られるスポットとしてよく知られている。特にローガンズ・ビーチでは、海岸に近いところで子どもを産んだり、子育てをしたりする姿がしばしば見られ、数週間に渡って滞在することも多い。メルボルンからは、「12人の使徒」と呼ばれる奇岩で有名なグレート・オーシャン・ロードをドライブしていくのがおススメ。
●Victor Harbour(南オーストラリア州)
アデレードの南80キロのところにあるヴィクター・ハーバーでも、5月から9月までの間、ミナミセミクジラが陸から見られる。フェアリー・ペンギンのコロニーもある。
●Denham(西オーストラリア州)
シャーク・ベイ地域の玄関口となるデナムはオーストラリアで最も西に位置する街。世界遺産に指定されているシャーク・ベイ海洋公園では、ザトウクジラのほか、ジュゴンや海亀も見られる。クジラのシーズンは6月から11月。南には白い貝殻が敷きつめられたようなシェル・ビーチがあり、イルカが浜辺に遊びに来ることで有名なモンキーマイアは北東に約26キロのところ。
(「地球の歩き方」ホームページ・シドニー特派員レポート掲載)
|