■高まる評価を受けながら、発展し続けるシドニーの食文化
イギリスのレストラン・マガジンが発表した世界トップ10レストランに、シドニーの高級レストランが2つ顔を出した。シーフードを中心としたモダン・オーストラリア料理で名高いロックプール(Rockpool)が4位、ジャパニーズ・フレンチと評されるテツヤズ(Tetsuya's)が10位である。世界のグルメの間ではもはや常識だが、シドニーのレストランの水準は、ここ10年ほどの間に急上昇している。実際、この2つのレストランは国内はもちろん、ニューヨーク・タイムズやタイム誌などでも絶賛を博し、数多くの国際的な賞を受賞している。
テツヤズはその名の通り、和久田哲也氏がオーナーシェフ。来豪当時は、料理に関してまったくの素人だったそうだが、5年ほどで独立し、20年たった今では「オーストラリアNo.1シェフ」と呼ばれるようになっている。予約を入れるのが難しいことでも有名で、常に数ヵ月先まで予約でいっぱいという人気ぶりなのだ。料理は、懐石風のコースメニューのみで、ディナーならたっぷり4時間はかかる。
活況を呈する今のシドニーのレストラン業界を見ていると、もしかしたら、その強みは「伝統がないこと」なのかもしれないと思う。新しいモノを取り入れること、今までと違った手法を使うことへの抵抗がまったく見られないのだ。もちろん、一流の料理人はしっかり修行を積んでいるが、そこから得たものや、すでに確立されたものにこだわりすぎたり、とらわれたりしない「若い移民国家ならではの柔軟さ」がある。世界各国の料理を融合しながら、現在進行形で変わり続けるシドニーの食文化は、今後も大いに発展を期待できそうである。
(「地球の歩き方」ホームページ・シドニー特派員レポート掲載)
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