■月の土地付き!? 「月のひつじ」映画前売券
(C)CSIRO
人類が初めて月に降り立った1969年、宇宙飛行士のアームストロングらは一躍「時の人」となった。その記念すべき月面歩行のライブ映像が、実はオーストラリアから世界中に発信されていた、ということはあまり知られていない。
当初、NASAはカリフォルニア州の設備を利用するつもりで、オーストラリアの施設にはバックアップの準備を要請していた。ところが、出発2ヵ月前にスケジュール調整が入り、ハイライト(?)の月面歩行を生中継するには、オーストラリアにある巨大アンテナを使う必要があることが判明した。パークスの科学者たちが、その重要任務を引き受けることになったのだ。
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NASAの科学者は、「羊しかいないオーストラリアで、宇宙事業ができるのか!?」と言ったそうだが、それも無理はない。パークスは、シドニーの西約360キロの内陸に位置する町で、ちゃんと(?)羊毛精製工場がある。州最大の金・銅の鉱山が1994年に開かれているが、今でも人口は1万人余り。当時そのあたりに住む多くの人たちが、羊毛で生計を立てていたことは疑いようがない。その小さな町に、NASAの技術者をはじめ、政治家やジャーナリストがどっと押し寄せたのだから、さあ大変。人々の期待が高まる中、思いがけないトラブルに見舞われて……。
……という実話を映画化したのが、日本で7月に公開されることになっているオーストラリア映画『月のひつじ(The
Dish)』だ。現場にいた人たちにとっては、ものすごくシリアスな出来事だったに違いないが、映画ではカルチャーショックを受けるアメリカ人エリート科学者と、大らかで気のいい田舎のオージーの対比など、笑える要素が盛りだくさん。オーストラリアでヒットした後には、ロンドン映画祭やサンダンス映画祭で招待作品として上映され、2000年トロント映画祭では観客賞を受賞している。『ピアノ・レッスン』や『ジュラシック・パーク』で高く評価されたサム・ニール(パークスにある施設の所長クリフ役)や、ハリウッドを含め世界中で活躍中のパトリック・ウォーバート(NASAの科学者アル役)ら、個性的な俳優が出演している。
この作品の日本公開を記念して、なんと「月の土地(1エーカー)付き前売り券」が期間限定で発売されている。『月のひつじ』前売り券と、サッカーグラウンドひとつ分に相当する月の土地がセットで2,780円というから、地球基準(?)で考えると格安!?
単独で月の土地だけを購入することも可能で、その場合は連名でもOK。アメリカでは、『スタートレック』出演者をはじめ、トム・ハンクスやメグ・ライアンら俳優、NASAの職員、レーガン、それからカーター元大統領まで購入しているそうだ。わたしのように、「月の土地ってそんなふうに売っていいの?」と思った人は、日本で独占権を持っているという、販売元Lunar
Embassy Japan社のウェブサイトへどうぞ。購入方法のほか、宇宙条約や月協定に関連した法律や権利の解釈についても説明されている。
購入すると、月の権利書、月の法律、月の地図とあわせて、アメリカ政府へ提出された所有権申請書のコピーが送られてくることになっている(送料別)。誕生日や結婚式のプレゼント、はたまた遺産が「月の土地」という時代になったらしい……。
(「地球の歩き方」ホームページ・シドニー特派員レポート掲載)
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