■今日から公開! "Rabbit Proof Fence" 【2003年2月1日】
毎年12月初旬に行われる"AFI Awards"は、オーストラリアのアカデミー賞と言われている。その2002年のAFI
Awardsで10部門にノミネートされ、最優秀作品賞、最優秀音楽賞、最優秀音響賞を受賞した"Rabbit Proof Fence"が今日から日本でも公開されている。(邦題は『裸足の1500マイル』)。
原作は、先住民アボリジニの混血児を白人社会に同化させる政策によって、家族から引き離され、施設に強制収容されたモリー&デイジー姉妹と従姉妹グレーシーの実話を基にしたもので、モリーの娘であるドリス・ピルキングトンが発表してベストセラーになり、フィリップ・ノイス監督をはじめ、撮影のクリストファー・ドイル、製作総指揮のジェレミー・トーマスなど、名だたるスタッフが参加して映画化された。
舞台は1931年の西オーストラリア州。収容所を抜け出した3人の少女たちが、機転を利かせて追跡をかわし、大陸を縦断するウサギよけのフェンス(Rabbit
Proof Fence)に沿って故郷を目指す逃亡劇だ。その歩行距離1500マイルは、北海道の稚内から沖縄までに相当する。
この作品のテーマを人種を超えた普遍的な家族愛だと捉えることもできるが、オーストラリア人にとって、コトはそれほど単純ではない。「アボリジニの保護と教育」という名目の下に、英語やキリスト教など白人の価値観を強要する隔離・同化政策は、1970年代まで続き、そのことが今「盗まれた世代(The
Stolen Generation)」と呼ばれ、脚光を浴びている真っ最中だからだ。シドニー・オリンピック前後には、和解へ向かう大きなうねりが感じられたが、公式の謝罪にまでは至っていない。
声高にその問題を訴えるわけではないが、この映画が世界各地で上映されることの意味は大きい。問題を抱えてはいるものの、多文化主義へと発展を遂げた今のオーストラリアだからこそ、この作品は世に出ることができたのだと思う。
フィリップ・ノイス監督は東京国際映画祭に招待された際の来日会見で、『ボーン・コレクター』『今そこにある危機』などの話題作を手がけ、ハリウッドで活躍していながら、オーストラリア映画界にUターンした理由を聞かれ、「アイデンティティを取り戻す時期に来ていたから」と答えたそうだ。
【上映予定映画館】※上映開始日は映画館により異なります
◆札幌 シアターキノ ※3/22(土)〜、スガイシネプレックス札幌劇場 ※3/22(土)〜
◆東京 シネスイッチ銀座
◆神奈川 関内アカデミー
◆名古屋 ゴールド劇場 ※ゴールデンウィーク〜
◆大阪 シネリーブル梅田 ※3/1(土)〜、敷島シネポップ ※3/1(土)〜
◆神戸 アサヒシネマ ※3/15(土)〜
◆福岡 シネテリエ天神 ※3/15(土)〜
(「地球の歩き方」ホームページ・シドニー特派員レポート掲載)
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