ホーム > オーストラリアよもやま話> バックナンバー

シドニーの最新トップ・レストラン事情(前編)
【2004年9月14日】


シドニーの春恒例のイヴェント「グッド・フード・ガイド・アウォード」の授賞式が、先週オペラハウス内のギローム・アット・ベネロングで開催された(アウォードの概要&昨年の結果は「シドニーのベスト6レストラン発表!」参照)。トップ・レストランを意味する3つ星ならぬ“3ハッツ”の顔ぶれは、「Claude's」をのぞいて昨年と同じ。いずれも、オーストラリアを代表する実力派レストランである。

な〜んだ、今年のレストラン業界は動きがなかったのか……というと、そんなことはない。2ハッツ&1ハットは悲喜こもごもだ。注目したいのは、初登場で2ハッツを受賞した「Bilson's」「Flying Fish」「Omega」。昨年1ハットに落ちた「Aria」も、2ハッツへカムバックを果たし、ドキュメンタリー番組収録のために、シェフの一挙一動を追いかけていたテレビ局のスタッフたちも大喜びだった。一方で、2ハッツから1ハットになった「Forty One」「 Lucio's」「 Otto」「Sailors Thai」「Salt」など、20ものレストランがランクを落としたのは、前代未聞のことらしい。たとえ一流レストランという評価を受けても、常に前進し続けていないと取り残されてしまう厳しい状況にある。

知らないと見逃してしまいそうなクロウズの入口。呼び鈴を鳴らして入る。

ちなみに、「Claude's」がランキングから姿を消してしまったのは、先月オーナーシェフが変わったばかりで、評価が間にあわなかったため。新オーナーシェフは、マレーシア生まれで、元弁護士の34歳の女性だ。もともと同レストランのシェフなので、大幅な路線変更はないと見られているが、シドニーのトップ・レストランのヘッド・シェフを女性が務めた例は過去にないというだけに、各方面から注目を集めている。きっと今ごろは、「お手並み拝見」と舌なめずりしている批評家たち相手に、毎夜真剣勝負を繰り広げていることだろう。

彼女と同年代の30代のシェフたちが元気いっぱいに活躍しているのが、今のシドニーのレストラン業界。面白くないワケがない。そういえば、今年のアウォードで、最高峰のレストラン・オブ・ジ・イヤーを受賞した「Quay」のヘッドシェフも、30代半ばだったっけ……。歴史やこだわりを持たないこの街だからこそ、彼らの自由で革新的なアイデアやテイストが花開くのかもしれないと思う。

今年シドニーで注目されたトレンド食材は、柔らかくてジューシーなバンガロー・ポーク、カヴォロ・ネーロ(黒キャベツ)、ビートルートなど。「え〜、ビートルート?」というなかれ。おなじみのハンバーガーに入った真っ赤なビートルートとはかなり趣きが違う、洗練されたアレンジがブームなのだ。いや、実はわたしも、3ハッツ連続受賞中の「Tetsuya's」でいただいた最近の懐石風コースメニューが、ビートルートで始まり、ビートルートで終わった(←デザートね)ことにはかなり驚いたんだけど……。ちなみに、昨年ブレイクしたキングフィッシュ(ヒラマサ)と和牛は今も健在。メニューに注釈なしで、"Hiramasa"や"Wagyu"とそのまま日本語が使われることも多くなった。流行というよりも、定番の地位を築きつつあるのだろう。

▼授賞式のようすを動画で見たい方はこちら
  Good food guide awards 2005 from smh.com.au 

(「地球の歩き方」ホームページ・シドニー特派員レポート掲載)
 
ひとつ前の話
ひとつ後の話