■合掌〜クロコダイル・ハンター逝く〜
【2006年9月7日】
「クロコダイル・ハンター」ことスティーブ・アーウィン氏が亡くなりました。人気ドキュメンタリー番組の撮影のため、グレート・バリア・リーフでシュノーケル中に胸をエイに刺され、ほぼ即死だったということですが、以来オーストラリアではそのニュースでもちきり。人々は寄ると触るとその話題を口にし、テレビでは緊急追悼番組が続々と放映され、インターネットのニュース・サイトや関連サイトはアクセスが殺到してダウンしてしまいました。
サンシャイン・コーストにあるオーストラリア動物園園長、テレビ番組のパーソナリティー、自然保護活動家……とさまざまな顔を持つ彼のことを知らないオージーはいないといっても過言ではありません。ベタベタのオージー英語とカーキ色のサファリスーツがトレードマークの彼がホストを務めるドキュメンタリー番組はこれまでに日本を含め120ヵ国以上で放映されており、はらはらドキドキしながらそのエネルギッシュなパフォーマンスを見守った人も少ないでしょう。
「ハンター」と呼ばれてはいるものの、彼はワニの狩猟には反対の立場で、生きたまま捕獲して、人間に危害を加えない生息地に移動させることを得意(?)としていました。ワニだけにとどまらず、野生動物の保護全般に情熱を注ぎ、中でも“危険”な動物が大大大好きだったスティーブが、「Ocean's Deadliest」というタイトルの番組撮影現場でエイにやられちゃうなんて――なんとも運命的な気もします。
さまざまな危険に遭遇しながらも、「何があってもカメラを回せ」と言い続け、環境保護のために死ぬことがあれば本望だと語っていたパートナーの早すぎる死―44歳でした―を、自然への愛情と熱意を共有し、共に環境保護活動に尽力してきた奥さんのテリーはどのように受け止めたのでしょうか……。
自分の子どもを片手で抱えながらクロコダイルに餌をやったり、南極でクジラやペンギンに近づきすぎたり……といった映像が物議をかもしたこともあったけれど、それは裏返してみれば彼の多大な影響力の証。愛情たっぷりに、それも文字通り体当たりで動物と接するスティーブのようなエンターティナーは、たぶん世界中を探しても見つかりっこないでしょう。
スティーブ・アーウィン氏を知るたくさんの人々に自然保護活動の遺志が受け継がれることを願いつつ、心からご冥福をお祈りします。
(「地球の歩き方」オーストラリア・シドニー特派員ブログ掲載)
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