■嵐が残していった新名所パシャ・バルカー
【2007年6月23日】
“オーストラリアで今一番ホットな観光名所”と揶揄されているパシャ・バルカー号(Pasha Bulker)を見てきました。
パシャ・バルカーというのは、全長225メートル、約4万トン級の石炭輸送船の船名。今月8日、ニュー・サウス・ウェールズ州沿岸を過去30年最大規模といわれる嵐が直撃した際に、17メートルを超える高波を受けて、シドニーの北約160キロに位置するニューキャッスルのノビーズ・ビーチで座礁してしまったのです。
船主は日本、船籍はパナマで、デンマークの会社が運航する同船は、事前の警告を無視して港沿岸を離れなかったとされ、強風と荒波の中、レスキュー・ヘリコプターに吊り上げられて韓国人とフィリピン人の乗組員21人が救助される映像は、トップニュースを飾りました。
船の崩壊や破損による700トン余りの燃料流出が危惧された当初は、もちろん非難轟々。このときの嵐はホントにすさまじく、一部の地域では降水量が300ミリに達し、瞬間最大風速も時速120キロを記録。周辺は「自然災害被災地域」に指定されるほど、甚大な被害を受けたのです。
が、海洋への燃料漏れがないことが明らかになり、被災地の張りつめた空気が一段落してみると、そこはオージー。パシャ・バルカー号をネタにしたユーモラスな話題が続出し、にわか観光スポットとして脚光を浴びるようになりました。
突如としてビーチに出現した大型船を見に大勢の人々が集まったため、周辺では交通渋滞が発生。テレビ局やラジオ局は、「この光景をTシャツにするとしたら、どんなスローガンにしますか?」なんていう公募や写真コンテストを行っています。数日前には、オークションサイト「eBay」にパシャ・バルカー号が出品されて、1600万ドルの値が付いたりもしましたが、優良評価の出品者からではあったものの、さすがに「ホンモノじゃない」と削除されました。
船の座礁から約2週間。その間にニュー・サウス・ウェールズ州沿岸地域は、立て続けに3度もひどい暴風雨に襲われたため、国中から集められた専門家たちによる離礁計画も一筋縄ではいかないようで、ここにきて解体の可能性もウワサされています。
実物を目にしてみると、ビーチからわずか20〜30メートルのところに、あんな大きな船が乗り上げてしまっているのは、何ともヘンテコな光景です。いったいどうやって動かすことができるのでしょうか?
船を見つめる人たちの目はとっても真剣なのですが、ユーチューブには、「Pasha Bulker Transformer」と題した↓こんなおちゃらけ解決策が公開中。
さらに、「Pasha Bulker Newcastle Ship For Sale」なんてのもあり。いやはや、オージーってば、座礁船ひとつでどこまでも遊べるのね……。
(「地球の歩き方」オーストラリア・シドニー特派員ブログ掲載)
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