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日本人なら観ておかなくちゃ、オーストラリア映画『Broken Sun』
【2008年5月8日】

「カウラの悲劇」 と呼ばれる日本兵の捕虜収容所からの集団脱走事件(参照: 「カウラの悲劇」から60年)を題材にしたオーストラリア映画『Broken Sun』を観に行ってきました。


邦題は『壊れた太陽』…と思ったら、ポスターでは「懐れた」となっていますね

戦争モノといっても、ヒーローを登場させ、愛国心に訴えて大衆受けを狙ったものとは、正反対に位置する作品で、戦場が描かれるのは、第一次世界大戦帰還兵の農民ジャックと、捕虜収容所から脱走した日本兵マサルのそれぞれの回想シーンの中でだけ。派手なアクション・シーンのほとんどない淡々とした、それでもって、胸にぐっとせまる静かな映画でした。

映画であれ、芝居であれ、小説であれ、戦争をテーマにした作品は、ともすれば一方の立場から、対立する敵=悪として非人間的かついい加減に描かれがちな中、この作品は日豪双方の視点や心情を交錯させることで、国籍や人種、年齢、時代、文化、信条を超えた普遍的なメッセージを織り込むことに成功しています。オージーと日本人が、どちらも居心地の悪い思いをせずに肩を並べて鑑賞できる作品に仕上がったのは、脚本家Dacre Timbs氏の奥さまが日本人であることも関係しているのかもしれません。

◆Broken Sun 予告編

「もし、俺が死に損ねたら……」というエピソードは、原作者のBrad Haynes監督やスタッフが、カウラで催された脱走事件記念式典に招かれた元日本兵の方から直に聞いた話を元にしたものだそう。生き残った3人の日本人と逢ったことで映画の方向性が変わり、「できる限りオーセンティックな作品に」という思いを強くしたと監督は語っています。

撮影・編集の予算がA$50,000(約500万円)未満という正真正銘のインディペンデント映画だけに、企画から公開までは5年がかり。シドニーでは、4月24日から約1ヵ月の予定で、クレモーンにあるレトロな映画館Hayden Orpheum Picture Palaceで、公開されています。チャンスがあれば、ぜひお出かけくださいね!

ついでながら、この夏(←日本の)には、カウラ事件そのものをテーマにしたドラマ『カウラ捕虜収容所からの大脱走(仮題)』が、日本テレビ開局55年記念スペシャルとして放映される予定。当初、『あの頃ぼくらの命はトイレットペーパーより軽かった』と題されていたもので、カウラでのロケもすでに行われたという情報が入ってきています。出演者は、小泉孝太郎さん、大泉洋さん、阿部サダヲさん、山崎努さん、加藤あいさん……といった面々。今年はカウラが注目を浴びる年になるかも……とひそかに期待中だったりします。

(「地球の歩き方」オーストラリア・シドニー特派員ブログ掲載)
 
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